北野勇作の甲羅

北野勇作の近況、イベント、その他です。

【ほぼ百字砂漠】と「砂のある風景」、あるいは【ほぼ百字小説】について

超人予備校の『ラクダイス』という芝居に出ました。

その劇中で朗読したのが【ほぼ百字砂漠】。

【ほぼ百字小説】を5つ。

以下がそれです。

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【ほぼ百字砂漠】

 砂しかないように見えるし、事実その通りなのだが、そんな砂漠の砂の中から砂の城を掘り出すことができる者がいるらしい。そしてさらなる達人ともなれば、その砂の城の中に隠された砂の本を読んだりもできるという。

 

 月の砂漠をはるばると、というあの歌は、月夜の砂漠ではなく月面にある砂漠を歌ったものなのだとずっと思っていた。おかげで今もあの歌を聞くと、アポロの月着陸船と宇宙飛行士とラクダが並んでいる絵が頭に浮かぶ。

 

 砂漠を歩いていた亀がサボテンと出会う。知性ある爬虫類と知性ある植物、砂漠には珍しく会話らしきものが成立する。彼らはしばし語り合い、亀は遠い土地の話と引き換えに、サボテンの身体の一部を食べさせてもらう。

 

 鳥取砂漠、と妻が言う。砂丘だよ、鳥取砂丘。ああ、今はそう言うのね。いや、昔からそうだよ。でも、ラクダもいるし。それは連れてきたんだろ。じゃ、あれも砂漠じゃなくて砂丘なんだ。いや、あれは砂漠、東京砂漠。

 

 普段は砂漠だが、一年に一度雨が降ると、それを待っていた植物たちがいっせいに芽を吹き急速に成長していちめんの花畑になり、また砂漠へと戻る。長いあいだそれは、蜃気楼あるいは砂が見せる幻覚だと思われていた。

 

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 三つ目のは、すでにあった【ほぼ百字小説】の中から。

 もちろんそれを書いたときは、サボテンの出てくる砂漠の芝居で亀の役をやることになるなんて思っていませんでした。

  

 

 この【ほぼ百字砂漠】を書くことになった顛末も、【ほぼ百字小説】にしてます。

これです。


【ほぼ百字小説】(1712) ヒトがラクダになる芝居、その稽古の途中で演出家が、【ほぼ百字ラクダ】とか書けます? いや、それは無理やで。じゃ【ほぼ百字砂漠】は? まだそっちのほうが。ではそれで。えっ、それで? それで、こうなった。

 

 ほぼ実話です。

そして、この芝居の稽古をやっていた頃、同時にブンゲイファイトクラブなるものに参加していました。

こんなのです。

BFC ブンゲイファイトクラブ|note

 

 で、2戦目に勝ち進めたら、

規定の原稿用紙六枚分に【ほぼ百字小説】を19個ぶちこんで勝負しよう、

というのはそのときには決めていて、

それで、しばらくツイッターにつぶやくのを休止してました。

規定では、ネットに発表したものは使用できなかったので。

あ、舞台で朗読しただけなら、問題ないはずです。

で、その芝居の稽古と

【ほぼ百字砂漠】を書かないと、という意識のせいで、

自然と「砂漠もの」みたいなものが溜まっていきました。

そういうことなら統一感みたいなものが出てちょうどいいか、と

砂をキーに19個選んで配置して作ったのが、

「砂のある風景」です。

ここで読めます。

https://note.mu/p_and_w_books/n/na9f073c42221

 

 

一方、【ほぼ百字砂漠】は、劇中で「小説を書いているケヅメリクガメ」として読む

という事情あって、そういう選びかたと配置にしました。

 

そして、それらとは別に、本来はツイッターにアップするはずだった順番もあります。

こっちは、現実と同時進行で、一日ひとつか二つ書いてるので、

日記みたいな要素も入ってます。

 

もうブンゲイファイトクラブに作品として提出したので、

今から本来の時系列に近い形でつぶやいていこうと思います。

といっても、リアルタイムで書いているのが【ほぼ百字小説】なので、

今書いた分も入り込んでの回想みたいな形になると思いますが。

ということで、「砂のある風景」とは違う形で楽しんでください。

そんなことをするのが、

文学的に、あるいは小説的に、いったいどういう意味があるのか。

よくわかりませんが、

私はツイッター上での【ほぼ百字小説】の

ひとつひとつが独立していて、

でも、選択と配置の仕方でいくらでも繋がったり

そのありようが変化したりする、

というあたりが、

今までの小説にはない変なところだと思っていて、

そして、そこには何かがある、と思っています。

まあなくても、やってておもしろければそれでいい。

私は、これがおもしろいと思ってやってるし、まだまだ続けるでしょう。

そんなわけで、楽しめる人は楽しんでください。

では、ツイッターで。

 

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そして、この【ほぼ百字小説】をゆるいテーマでイラストといっしょにまとめたものが

『じわじわ気になるほぼ100字の小説』シリーズ。


全部で3冊出てます。1冊に【ほぼ百字小説】130篇収録。

それぞれ、「不安」「生き物」「世界」がテーマになっています。

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