ななつの娘と夜の旅
電子書籍『ななつの娘と夜の旅 月の巻』が出ました。【惑星と口笛ブックス】です。
これが「月の巻」で、このあと「水の巻」「石の巻」と続きます。
紙の本にはなっていません。電子書籍オリジナルです。まあ紙の出版社に持ち込んだりもしたんですが、出せなかったんですね。
いわゆる売れ筋の小説ではありません。
七歳の娘といっしょに夜の散歩をするだけの何も起こらない小説です。
最近のツイッターでの言い方をすると「トンネルに入らない」小説ですね。
いろんな事件が起きて危機に陥ったり、はらはらどきどきしたり、というような、まあそれが「トンネル」です。小説の書き方なんかを読むと小説にはそういう要素が必要でそれが読者へのサービス、みたいなことが言われています。
でも私はあんまりそうは思わないんですね。もちろんそういうのでおもしろい小説もありますが、そうでなくてもおもしろい小説もおもしろいものもたくさんある。夜の散歩なんて、まさにそうです。
実際、娘が七歳くらいのころ、私はほとんど毎晩、娘といっしょに近所を散歩していました。どうでもいいようなことをあれこれ考えながら娘といっしょにただ歩いていることが、すごくおもしろかった。今から考えると夢の中の出来事みたいで不思議です。そういう感覚を定着しておきたくて書いたような気がします。そういう「意味としては記録できない何か」を記録するのに小説というのはとても向いている。いや、それは小説にしかできないのではないか、と私は思っています。私が小説のいちばんおもしろいところだと思うのは、たぶんそのあたりで、だからそういうことをやろうとしました。やれてるかどうかはわかりません。まあいちど読んでみてください。
「天使が落ちている」「影を渡って」「ロボットが行方不明」「空き地に月が」の四話です。どれも、夜の散歩一回分の話、だから四夜分入ってます。
紙の本では読めない夜の散歩を電子で楽しんでもらえたら嬉しいです。
http://dog-and-me.d.dooo.jp/wakusei_kuchibue/0021nanatsu.html