『昔、火星のあった場所』が復刊しました。
いわゆる「デビュー作」というやつです。なんだかんだで、もう２５年以上前に書いた小説ということになります。ちょっとびっくりしますね。初めて書いた長編でもあります。それまで原稿用紙三十枚くらいの短編とかショートショートしか書いたことがありませんでした。実際これも、もともとはショートショート（会社の業務として鬼退治をやらされる新入社員の話）だったのですが、それがまだどうも書き足りない感じで続きを書いていったらなかなか終わらず、なんにも決めてないまま書き続けて、終わったらこうなってました。何がびっくりしたといって、終わったことにびっくりした。どうやって終わるのかなんて、まったくわからないまま書いてたのです。そうやって書き続けることが、ただ楽しかった。
今読み返すと、いろいろ混乱していて、手探りで、手当たり次第で、うまくいってないところもたくさんあります。でもこれは、この書き方でないと書けなかったのでしょう。今、同じことは書けないし、同じようにも書けない。いい悪いではなく、単純にそう思います。
デビュー作にはすべてが入っているとよく言われますが、ひさしぶりに読み返してみて、ちょっとびっくりするくらいその通りだなと思います。だから、いろんな事情で長いこと消えたままになっていたこの小説をようやく復刊できたとはとても嬉しい。
ここには、扱えもしない素材やら道具を使い方もわからず振り回している２５年ほど前の自分がいて、今とずいぶん変わったところもあんまり変わってないところもあって、まあそういう部分も含めて楽しんでいただけたら幸いです。
